仕事や留学、家庭の都合などで日本を出て海外に住むことになったそこのあなた!
日本を出る前に、最低限しなければならないことは何でしょうか?必要な手続きをうっかり忘れてしまうと、後々困ってしまうかもしれません。
今回は、住民票を抜くことによる影響を中心に、必要な各種手続きを確認していきます。
まずは海外転出届を提出しましょう
海外へ移住する際は、自治体の役所で「海外転出届」を提出し、住民票を抜く必要があります。この届出は、基本的に日本を出る2週間前から当日の間に行わなければなりません。
転出手続きのために必要な書類は、身分証明ができるものと個人番号カードまたは住民基本台帳カードの2点です。特に煩雑な手続きはありませんのでご安心を。予約等の詳しい届出の方法は、お住まいの自治体の役所にお問い合わせください。
ただし、日本を離れる期間が1年未満の場合は、短期滞在とみなされるので海外転出届を出さなくても大丈夫です。以下の転出届を出すことによるメリットデメリット見て、ご自身で判断してください。
住民票を抜くことで変わること
①住民税免除
②国民年金保険が任意に
③国民健康保険の資格喪失
④マイナンバー無効化
⑤証券口座解約
⑥銀行口座解約または口座切り替え
①住民税が免除されることになります。
住民票を抜くということは日本の非居住者となるわけですから、当然日本の住民税を払う必要はなくなります。その代わり、移住先で住民税を払うことになります。
②国民年金保険が任意のものになります。
年金保険には、20歳以上60歳未満の国内居住者全員に加入義務がある「国民年金保険」と、会社員や公務員に加入義務がある「厚生年金保険」があります。住民票を抜いた場合、このうちの「国民年金保険」は義務から任意のものに変わります。
ご自身の判断によって、海外移住後も国民年金保険を支払うかどうかを決めることができます。任意支払いを続ける場合は、お住まいの市町村窓口で任意加入の手続きをする必要があるので、お忘れなく。また、支払いの方法は国内にいる親族等の協力者が本人の代わりに納めるか、日本国内に開設している預貯金口座から引き落とすかどちらかです。つまり海外口座からの引き落としは不可ということです。
「厚生年金保険」については、留学や現地採用の場合は支払う必要がありません(支払うことができません)。ただし、日本企業から海外派遣される場合は、原則継続して加入する必要があります。この場合、日本と赴任先の国で二重に年金保険を納めなくてもいいように、社会保障協定というものが締結されていることがあります。海外赴任の際は、ご自身で会社に社会保険の詳細を確認してください。
③国民健康保険の資格を失います。
海外転出届を提出した翌日から、国民健康保険の資格を喪失します。
よって、今後一時帰国等の際に日本の医療機関にかかる場合、今まで3割負担で済んでいた医療費が、全額負担となります。保険税は転出届を提出した月が月割で再計算となり、後に保険証も返却することになります。
④マイナンバーが無効化します。
住民票を抜くことで、同時にマイナンバーが無効化します。
ただし、2024年5月27日から、国外転出者向けマイナンバーカードに切り替えることで、海外に住んでいてもマイナンバーが利用できるようになりました。
お住まいの自治体で海外転出届出を提出する際に、マイナンバーカードも提出することで、国外転出者向けマイナンバーカードを発行してもらうことができます。詳しくはマイナンバーカード総合サイトから。
また、もし無効化しても、国外からのカード申請や帰国後の再有効化が可能です。
⑤日本で開設した証券口座を解約する必要があります。
現在の日本の証券会社は、国外で金融商品を取り扱う資格がありません。よって、1年以上海外に居住する場合は、原則証券口座を解約しなければなりません。
もしあなたが海外で日本の証券口座を使って取引をすると、居住国の法令に抵触する可能性があります。
また、直接取引を行わなくても、いずれ証券会社はあなたが海外に居住していることに気づくでしょう。なぜなら証券会社には、口座人の住民票が置かれている税務署に支払い調書を提出する義務があります。その際に、管轄の税務署であなたの住民票が登録されていないことが発覚するのです。
⑥銀行口座を非居住者向け口座に切り替える必要があります。
日本の銀行では、国外に移住する際は国内銀行口座を解約、または非居住者向け口座に切り替えるよう案内している所がほとんどです。
例えば、ゆうちょ銀行は非居住者向けサービスがないため、国外転出者には可能な限り口座解約を推奨しています。一方、三菱UFJ銀行や三井住友銀行、ソニー銀行等は、非居住者用のサービスも取り扱っています。ただしそれらのほとんどが、海外留学や国内勤務先からの海外赴任等、いずれ日本に帰国する人を対象としていますので、現地採用の場合は利用できない可能性があります。
もし、非居住者用サービスを使わずに海外移住してそれが銀行側に気づかれた場合、銀行から連絡が来て口座が凍結される恐れがあります。その場合は、日本に一時帰国して窓口で手続きをしなければならず、かなり手間がかかります。また、今は任意とされている“銀行口座とマイナンバーの紐付け”が今後仮に義務化された場合は、銀行に口座保持者の情報が直接伝わりますから、海外居住者の国内口座取締はより一層厳しくなるでしょう。
しかし現状は、口座の登録住所を実家等に指定しておけば、銀行側が国外転出に気付いて連絡してくるということはあまりないようです。
国民年金や奨学金の支払い等は国内口座しか登録できませんから、かなり不便な問題ですね。
海外転出届の提出は必ず必要なのか
ここまで、海外転出届を提出することによる影響を見てきました。しかし、そもそも海外転出届は必ず提出しなければならないものなのでしょうか。
実は、海外転出届を提出する義務は、住民基本台帳制度に明記されており、もし届出をしなかった場合は、5万円以下の過料に処せられる可能性があります。
ただし、登録住所を実家等に指定して各種税金をきちんと納めていれば、過料が請求されるケースは稀のようです。実際に、住民票を日本に置いたまま数年間海外に住んでいる人も多く見受けられます。
住民票を抜くことのメリットとデメリットを理解して、ご自身の状況で判断しましょう。
今回は以上です。海外移住でわからないことがあったら、一緒に一つずつ解決していきましょう。
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