2024年4月1日から、日本語教師の国家資格「登録日本語教員」が新設されます。本記事では「登録日本語教員」の資格取得方法、現役日本語教師に対する措置等について説明していきます。
「登録日本語教員」とは?
2024年4月から晴れて新設された国家資格、「登録日本語教員」。国家資格と聞くと響きがいいですが、実際にはどのような資格なのでしょうか。
「登録日本語教員」とは、認定日本語教育機関で働く際に必要な資格です。認定日本語教育機関とは文部科学大臣の認定を受けた日本語教育機関のことで、登録日本語教員と同じく新しく創設された制度です。日本語教育機関の質向上のためにも、既存の学校を含め認定機関はこれからどんどん増えていくでしょう。そのため、「登録日本語教員」は国内で日本語教師として働きたい方には必須の資格と言えそうです。
一方、現在海外の日本語学校等で働いている方は、この資格を新たに取得する必要ないでしょう。そもそも、認定日本語教育機関は国内の在留外国人の留学・就労・生活を対象とした日本語教育の質向上を目的とした制度です。そのため、海外の日本語学校に勤務されている方は、新たに「登録日本語教員」を取得する必要はないというのが筆者の見解です。
ただし、今後登録日本語教員という資格が広く認知されるに伴い、海外の日本語学校も応募条件に本資格を指定する可能性があります。
登録日本語教員の取得方法
次に、登録日本語教員の資格取得方法についてです。今までの日本語教師の資格と新制度「登録日本語教員」の取得方法の違いを比べてみましょう。
【既存の日本語教師資格取得方法】
今までは、日本語教師の資格を取得する方法は以下の3つがありました。
①日本語教師養成講座を修了する …文化庁が認定した民間の日本語教師養成講座に420時間通う方法です。
②「日本語教育能力試験」に合格する …公益財団法人 日本国際教育支援協会が年に一度10月に主催している「日本語教育能力試験」を受ける方法です。
③大学で日本語教育を専攻/副専攻する …日本語教育養成課程を実施する大学で日本語教育を専攻または副専攻し、必要単位を取得する方法です。
時間はかかれど、やることはシンプルです!
【新制度「登録日本語教員」の取得方法】
一方、「登録日本語教員」を取得するにはもう少し段階を踏まなければなりません。取得するには「養成機関ルート」と「試験ルート」の二つのルートがあります。順に見ていきましょう。
『登録日本語教員の資格取得ルート』「登録日本語教員の登録申請の手引き」 文化庁国語科
①養成機関ルート …養成機関ルートでは、文部科学大臣認定機関(=日本語教師養成講座や大学等)で養成過程を修了すること、日本語教員試験の応用試験を受けること、実践研修を修了することが必要です。
実践研修については、認定機関の養成課程中に一緒に行う方法と、養成課程および応用試験の後で行う方法があります。また、ここでいう日本語教員試験は既存の「日本語教育能力試験」とは異なるものです。日本語教員試験は年に一回以上文部科学省が開催することとなっており、第一回目は2024年の秋頃に実施される予定です。
②試験ルート …試験ルートでは、日本語教員試験の基礎試験と応用試験を受けることと、実践研修を修了することが必要です。養成課程がない代わりに、試験を2段階で受けなければならないということですね。
既存の資格取得方法に比べて、ステップが増えましたね。
また養成機関ルートでも試験ルートでも、試験・実習の両方が必須なのが大きな特徴です。
また、「日本語教員試験」の新設に伴い、既存の「日本語教育能力検定試験」は廃止されるのかどうかも気になるところですが、現状存続有無については公表されていません。日本語教育能力試験を実施しているJEESのホームページには、”令和6年度の実施要項は、決まり次第公表します”と記載されています。
💡追記
JEESが主催の日本語教育能力検定試験は、令和6年度も例年通り行われる模様です。ただし、国家資格としての登録日本語教員のための試験ではなく、あくまで自身の力試し、またはスキルアップのためのものとの位置付けです。
現役日本語教師はどうなる?
最後に、現役日本語教師に向けた移行措置をご紹介します。今後のために新しい資格に更新したい、せっかくだから国家資格を取得したい、という方は必見です。
残念ながら、現在日本語教師としての資格を持っていても、そのまま「登録日本語教員」に資格を移行することはできません。しかしながら、負担軽減のために試験または実習が免除されるいくつかの措置が用意されています。何が免除されるかは、現在持っている資格の取得方法によって異なります。
『登録日本語教員の資格取得に係る経過措置』「登録日本語教員の登録申請の手引き」文化庁国語科
【経過措置 パターン① 養成講座/大学課程を修了している現役教師】
日本語教育養成講座または大学の日本語教育養成課程を修了されている方は、養成内容が必須50項目に対応しているかしていないかによって、措置が異なります。必須50項目とは、『日本語教育人材の養成・研修のあり方について(報告)改訂版』文化審議会国語文化会に掲載されたものを指します。
大学の養成課程を修了された方は、こちらの文化庁が公表している表から、ご自身の大学の養成課程が必須50項目に対応しているかどうかご確認ください。
民間の養成講座については、未だ文化庁からは必須50項目対応講座のまとめ等は公表されていません。公表され次第当ブログでも掲載いたしますが、現在はご自身の養成講座に各自問い合わせる必要がありそうです。
【追記】
令和6年3月29日に、文化庁によって必須50項目に対応した日本語教員養成課程の一覧が公表されています。こちらから大学・養成講座どちらも確認することができるようになりました。
では、肝心の経過措置についてです。養成内容が必須50項目に対応している場合、日本語教員試験の応用試験のみが必要です。その他基礎試験、実践研修は免除されます。
一方、必須50項目に対応していない場合、応用試験および講習を受け、講習認定試験に合格することが必要です。基礎試験および通常の実践研修は免除されます。なお、学士以上の学位保有者は講習Ⅱのみ、学位不保持者は講習ⅠとⅡを受ける必要があります。
学校の養成課程に不足があった場合は、補足で講習と講習認定試験を受けないといけないということですね。
【経過措置 パターン② 日本語教育能力試験に合格している現役教師】
日本語教育能力試験に合格されている方は、講習を受け講習修了試験に合格することのみが必要です。その他日本語教員試験の基礎/応用試験および通常の実践研修を受ける必要はありません。なお、日本語教育能力試験の受講年によって措置が異なり、平成15年3月31日までに実施された試験の受講者は講習のⅠとⅡを受ける必要があります。一方、それ以降の試験受講者は、受けなければならないのは講習Ⅱのみです。
※経過措置が適用される期間は、各パターンで異なります。文化庁によると、必須50項目に対応した課程修了者は令和15年3月31日まで、必須50項目に対応していない課程修了者および日本語能力試験合格者は令和11年3月31日までです。
まとめ
これからますます活躍の場が広がるであろう日本語教師。現役教師の方にも、これから資格を取ろうとしている方にも参考になれば幸いです。新しい制度ということで情報はまだまだ変わりうるので、皆さんも文化庁の動向をチェックしてみてください。
筆者も随時更新するよう努めます。
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